木のテーブルの上に、粗い石から整った器へと少しずつ形が整っていく試作品が並び、複数の人の手が最後の一つに伸びている様子

売れたものが良いプロダクト

野村です。

良いものを作る。これは正しい姿勢です。しかし、プロダクトマネジメントの世界には、それより大切なことがあります。売れたものが、良いプロダクトであるということです。プロダクトマネジメントの、基本中の基本です。

私は、トレーニングの開発を続けています。これまでにかなりの数のトレーニングを開発してきました。最近では、実施のたびにトレーニングを作り直しています。今回は、そうしたコースの一つである、あるワークショップを取り上げながら、プロダクトマネジメントの話をします。

コースが生まれたきっかけ

このコースの始まりは、5年ほど前に遡ります。

ある企業内研修で、ある主題を軸に扱うことになりました。すべてのワークに、その要素が含まれます。そのため、何度も何度も、同じことを練習する必要がありました。

理論は、すでにあります。しかし、ワークの方法は手探りで始めました。

難しかったのは、「体感的理解」にどう到達するかということです。ここでいう体感的理解とは、ある空気を、受講者自身が感じ取ることです。馬鹿笑いは起きない。比較的深刻な話をしている。それなのに、和やかに、ゆっくりと、きちんと意見を言えている。そういう空気です。説明して伝わるものではありません。その空気を感じさせることが、このワークのポイントです。

当初は毎週開催で、体感的理解に至るまでに6週間ほどかかっていました。それが今では、3時間以内に到達できるようになっています。

転機

まったく別の長期間のコースを運営していたときのことです。当初の設計には含まれていなかったこのワークを、試しに導入してみました。

このとき、なぜかうまくいったのです。コース本編の中で、その部分が異様に高く評価されました。もともとのスコープに入っていないものを試しにやってみたら、それが高評価だったのです。

そして、このワークは、その長期コース全体の、いちばん最初の半日コースになりました。

繰り返す

その後、このコースは定期的に開催されるようになっていきます。これはまったく予想していなかったことでした。

毎回内容を作り変え、今日に至っています。実際に「やってみる」、そして「修正する」。プロダクトマネジメントの基本どおりの行動です。

そして今回、従来のコースの枠組みとは別の枠組みで、このワークショップを単体で実施することを打診されています。これもまったくの予想外です。

売れるはずのないものが売れる

予想外、という言葉を使いました。つまり私は、「これが単体で求められることなど無いだろう」と思っていたということです。「これは売れる、流行る」とも思っていませんでした。しかし実際には、引き合いがあるわけです。

これまでにも、いくつかのコースで同じようなことがありました。たとえば、プロジェクトマネジメントの中の、スコープマネジメントのコースです。なぜか評価が高く、繰り返し求められる。私自身は、EVM(アーンドバリューマネジメント)の2日間コースのほうに「良いコースを作った」という自信がありました。しかし実際には、なかなか売れませんでした。

作り手が「良い」と思うものと、実際に求められるものは、一致するとは限りません。そして、どちらが良いプロダクトかを決めるのは、作り手ではありません。

まず、やってみる。評価されたら磨いていく。そして、売れるものが視えてくる。そうしたことが、実際のコース開発においても起きています。

正垣さんの本

この話については、サイゼリヤ創業者の正垣泰彦さんの本が参考になると思います。『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』(日経ビジネス人文庫、2016年)です。2011年に日経BP社から出た単行本『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』を、増補して文庫にしたものです。書名が、そのままこの記事の主題になっています。

正垣さんは、「自分の店の料理はうまい」と思ってはいけない、と書いています。そう思ってしまうと、「売れないのはお客が悪い。景気が悪い」と考えるしかなくなり、改善を進められなくなるからです。そして「良いモノは売れる」という考え方を、地球の周りを太陽や惑星が回っているとする天動説にたとえ、自分たちに都合良く世界を見るのではなく、物事をありのままに見るよう努力しなければならない、としています。

EVMのコースに自信を持っていたときの私は、天動説の側にいたのだと思います。

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